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スタッフブログ

コンサート

2022.10.25

10/16(日)及川浩治ピアノ・リサイタル「名曲の花束」

公演チラシとプログラム

今年の「名曲の花束」は、ロマン派の曲を集めた、「ガラ・コンサートのピアノ版」がコンセプト。歌曲やオーケストラ曲なども含むバラエティに富んだロマン派の名曲をピアノだけで表現するという試みです。1曲目『トロイメライ』の後にトーク。愛や癒しを表現する6度の音程に注意して聴いてみてください。例えば、『愛の夢』。タ~ラ~ン。プログラムは進み、荒々しい『荒野の狩』、これまた激しい『死の舞踏』で前半が終わ…あれ?一旦舞台袖にはけた及川さんが戻って来られて、「すみません。『愛の夢』を飛ばしてしまいました。」予定されていたプログラムでは『荒野の狩』と『死の舞踏』の間に『愛の夢』があったのですが、トークの際にワンフレーズ弾いたことにより、及川さんの中で『愛の夢』が終わったという感覚が残ったのでしょうか。これが飛んでしまったのです。でもすぐに切り替えて、場内は甘美なメロディーに包まれました。こんなちょっとしたハプニングはあったものの、ピアノが持つ多彩で奥深い表現力と「ピアノの魔術師」リストのとてつもない才能を実感できた充実したコンサートでした。アンコールはショパン『別れのワルツ』とノクターン第20番『遺作』。
公演終了後の及川さんの指には、なんと絆創膏が!トゥルルルルンッと指を滑らせるグリッサンドの時に怪我をされたそうです。「大丈夫、ピアノに血はつけませんでした。」なんておっしゃっていましたが、いやいや、ピアノも大事ですが、御身はもっと大事ですよ。

2022.09.27

9/23(金・祝)オーケストラ・アンサンブル金沢 大阪定期公演

今年のアンサンブル金沢大阪定期公演は、9月よりアーティスティック・リーダーに就任された広上淳一さんが指揮、毎年楽しみなソリストは、人気・実力ともに日本を代表する神尾真由子さんという豪華な顔合わせとなりました。
第1部は民族的作品の部というべきラインナップ。哀愁を帯びた導入からハンガリー的な要素を色濃く残したコダーイ「ガランタ舞曲」でスタートし、続くタンゴの革命児ピアソラの「ブエノスアイレスの四季」では神尾さんのすばらしい技巧が遺憾なく発揮され、感嘆しました。ソリストアンコールの「パガニーニ『24のカプリース』より第5番」では、さらなる超絶技巧に感嘆・感動が深まりました。
第2部は、ベートーヴェンがナポレオンに捧げるために書き上げた大作「英雄交響曲」。革命的で雄大な、言わずと知れた古典の王道曲です。アンコールは「ビゼー『アルルの女』」。卓越した音楽性とユニークな力強い指揮で知られるマエストロ広上さんとアンサンブル金沢の創り出す濃密な演奏に時間を忘れて引き込まれ、別世界にループしたような感覚で音楽の醍醐味を存分に味わう演奏会となりました。

チケット・プログラム・パンフレット

2022.08.05

7/31(日)サマー・ポップス・コンサート

猛暑?酷暑?とにかく厳しい暑さの中、ザ・シンフォニーホールでは満員のお客様が来場され、「サマー・ポップス・コンサート」が開催されました。
恒例の『ラ・クンパルシータ』に始まり、前半はポール・モーリア特集。「ひきしお」「エーゲ海の真珠」「オリーブの首飾り」「恋は水色」と美しく懐かしい曲に続き、名作映画「ひまわり」の映像が浮かぶ壮大なテーマ曲に続き、カラオケの十八番という方も多いのではという「マイウェイ」で大きな盛り上がりで前半は終了しました。
後半は、リズミカルな映画音楽「ミッション・インポッシブル」「007メドレー」に「ルパン三世のテーマ」が続き、ここでクラシック曲、エルガー『「エニグマ変奏曲」より“ニムロット”』、最後は盛大な盛り上がりの「宇宙戦艦ヤマト」で締めくくられました。そして本当の最後の曲はアンコール、毎回お馴染みのノリの良い「キャリオカ」。指揮者藤岡幸夫さんが何度も口にされましたが、クラシックを好きになってほしいという願いの元に始められたという「サマー・ポップス・コンサート」もなんと21回目。安心感のあるお馴染みの曲と新しい曲がいい具合に交じり合う熱量の高い楽しいコンサートとなりました。
このコンサートは毎回朝日放送のアナウンサーが司会をされます。それぞれの個性と藤岡さんの会話と雰囲気が毎回個人的な楽しみのひとつになっています。今回は朝夕の情報番組に出演されご存知の方も多い斎藤真美さんが担当されました。藤岡さんと以前からの馴染みのような息の合ったテンポの良い会話に、さすがと感心しました。来年の司会はどなたかな、どのような会話と雰囲気かな、私のもうひとつの楽しみです。

2022サマー

公演チラシとプログラム

2022.07.29

7/24(日)小林研一郎の「夏休み・名曲招待席」

3階席までびっしりと埋まったザ・シンフォニーホールの客席は、コロナ禍以降、久しぶりに見た光景でした。そのたくさんのお客様の期待に応えるパワフルな公演は、お馴染みシベリウスの交響詩「フィンランディア」から始まります。現在世界で起こっていることを踏まえたマエストロの解説。10分弱の旋律の中に、激しい攻撃を受け、打ちひしがれ、それでもまた力強く立ち上がる民衆の姿が描かれます。全く見事としか言いようのない構成が、深い陰影をもつ演奏から鮮やかに浮かび上がり、感動を覚えました。
ソリストは遠藤真理さん。藝大時代には、マエストロの授業を受けられたこともあるそうです。チェロ特有の落ち着いた音色が深く心地よくザ・シンフォニーホールいっぱいに響きました。最後は、ラヴェルの「ボレロ」。いつ聴いても、何度聴いても、どこで聴いても、血がたぎります。
お客様の盛大な拍手からは、マエストロとオケへの敬意と親しみと名残惜しい気持ちが、渾然一体となって伝わってくるようでした。

公演チラシとプログラム

2022.06.17

6/12(日)前橋汀子ヴァイオリン名曲選

公演当日は鮮やかなピンクのドレスでした

2020年、2021年と2年連続で中止になってしまった「前橋汀子ヴァイオリン名曲選」。演奏活動60周年となる記念イヤーに漸く開催できました。
東西冷戦のただ中に旧ソ連で学ばれた前橋さんだからこそ、国境を越える音楽への深い思いを込められた演奏は、本当に心打たれるものでした。落ち着いた声音で優しくお話される前橋さんご自身のごとく、グァルネリウスから紡ぎだされる低音がしっとりと響き、印象に残りました。
アンコールはドビュッシーの『亜麻色の髪の乙女』とフランクの『ヴァイオリンソナタ イ長調』第3~4楽章。本編プログラムの延長戦のように、充実したアンコールでした。熱の入ったたくさんのスタンディング・オベーションに前橋さんの演奏を待ち望んでいたお客様の気持ちを実感しました。
ピアノはヴァハン・マルディロシアンさん。ピアノだけでなく、指揮も作曲もされる才人です。1人でリハーサルされているときは、足を前にポンと投げ出して、リラックスした様子でした。まるで自宅で気まぐれにピアノを弾いているところを覗き見させてもらっているようなお得な気分になりました。

2022.05.06

4/29(金)関西フィル 第327回定期演奏会

4月29日、関西フィルハーモニー管弦楽団第327回定期演奏会に行きました。
アサヒメイト4月号でご紹介した公演です。
「純情なる音世界~Pure Heart Orchestra」と銘打たれた新シーズンの開幕を飾る公演で、
指揮者・下野竜也さんは関フィル定期公演初登場。
オール・ドヴォルザークの慈しみに満ちた世界を堪能するラインナップです。
前半は序曲三部作「自然と人生と愛」作品91~93。
母国チェコでも三曲まとめて演奏されることは少ないという貴重な機会でした。
後半のメインは懐かしい薫りが満載でどこか心が安らぐ明朗な「交響曲第6番」。
初めて聴くのに懐かしい、心温まるドヴォルザークらしいナンバー。
下野さんの指揮は情熱的で、演奏者と刺激し合いつつ熱量が高まり、
観客の気持ちも高揚する、生の演奏ならではの一体感・醍醐味を存分に味わえる公演でした。

公演チラシとプログラムとチケット

2022.04.04

3/27(日)おいしいクラシック2022

毎年3月下旬の公演は、ABCラジオのパーソナリティの方に司会をしていただくシリーズです。昨年までの道上洋三さんに代わって今年は、ABCアナウンサー浦川泰幸さんの司会です。「おいしいクラシック」というタイトル通り、コース料理になぞらえて、音の絶品料理が次々と舞台上に現れます。「カルメン」(ビゼー)、「花のワルツ」(チャイコフスキー)、「ハンガリー舞曲 第5番」(ブラームス)、「フィガロの結婚」(モーツァルト)、「運命」(ベートーベン)、「ニュルンベルクのマイスタージンガー」(ワーグナー)、さながら各球団の主力打者がズラリと並ぶオールスター戦のようです。作曲家の生没年を毎回「江戸後期」などと、日本の時代に置き換えて説明してくれる浦川アナ。そうか、ブラームスは土方歳三の2コ上なんだ…
後半は、松岡莉子さんのケルティック・ハープからスタート。ずっと笑みを湛えている松岡さんご自身にも、ケルティック・ハープの柔らかな音色にも癒されました。松岡さんのスペシャルメニューの後は、「『四季』より春」(ヴィヴァルディ)、「春の声」(J.シュトラウス2世)と、この季節にピッタリの曲が続きます。食後の余韻は「プリンク・プランク・プルンク」(アンダーソン)。浦川アナは、「ハムスター行進曲」と例えていましたが、まさにハムスターがクルクルと回し車で遊んでいるような軽快な曲がピツィカート奏法で紡がれていきます。コントラバス陣の「魅せる」演出にも客席は大いに沸きました。オケの皆さんもノリノリで、親しみを覚えます。最後は「ラデツキー行進曲」(J.シュトラウス1世)。みんなで楽しく手拍子をして、最初から最後までずずずいーっとおいしくいただきました。ごちそうさまでした!
浦川さんのスパイスの効いたトークは、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」(月~木曜15時~)でどうぞ。

公演チラシとプログラム

2022.03.24

3/21(月・祝)伊藤晴 ソプラノ・リサイタル「ベスト・オブ・アリア」

年末のジルベスターコンサートで素晴らしい歌声を披露してくださった伊藤晴さんのリサイタルです。第1部はサティ、ビゼー、グノーといったフランスの作曲家の曲で、第2部はロッシーニ、プッチーニ、ヴェルディといったイタリアの歌曲を中心にまとめられていました。ジルベスターのときにも感じましたが、伊藤さんの歌声は、まるでほんの1メートル先で歌っているかのような近さを感じます。点や線ではなく面で迫ってくる感覚とでも言うのでしょうか。アンコールはプッチーニの「ラ・ボエーム」より『私が街を歩くと』、小林秀雄「すてきな春に」の2曲。この日は雨こそ降っていなかったものの、空は厚い雲に覆われていましたが、伊藤さんのお名前の通り、雲間からさっと光が差して晴れ渡っていくようなリサイタルでした。

公演チラシとプログラム

2022.02.09

2/5(土)千住真理子 スウィート・バレンタイン トーク&リサイタル

「スウィート・バレンタイン」のタイトルに相応しく、あらゆる角度から愛や恋を表現してくれたコンサートでした。歌劇「フィガロの結婚」より”恋とはどんなものかしら” (モーツァルト)では浮き立つような恋心を、『夜想曲第20番 遺作』(ショパン)では悲しく切ない別れを、『愛のあいさつ』(エルガー)や『愛の夢 第3番』(リスト)では優しい気持ちに満ちた穏やかな愛を、それぞれ感じながら鑑賞できました。トークで弱音器(ミュート)についてのお話があったので、『ツィゴイネルワイゼン』では弱音器を外すタイミングを意識して観察することができ、興味深かったです。
アンコールは『愛の悲しみ』(クライスラー)と『アメイジング・グレイス』。しっとりとした雰囲気で終わった後は、数分前まで舞台で優雅に演奏していた人がもうタクシーに乗っているという、千住真理子名物ともいえる早業を見ることもできました。

公演チラシとプログラム

2022.01.28

『ヴァイオリニストの第五楽章』前橋汀子

幼い頃からの前橋さんの写真も見どころです

毎年6月の恒例となっている前橋汀子さんの「ヴァイオリン名曲選」ですが、一昨年と昨年は残念ながら中止となってしまいました。今年は演奏活動60周年記念!なんとしても今年こそは無事開催できることを願っています。
さて、その前橋さんのコンサートを更に楽しむために、お薦めしたいのが、2020年11月に刊行された『ヴァイオリニストの第五楽章』(日本経済新聞出版)。前橋さんの音楽との歩み、ヴァイオリンの名曲にまつわる思い出、ロシア文学者の亀山郁夫さんとの対談という3本立てで構成されたエッセイ集です。
小野アンナ、齋藤秀雄、ミハイル・ワイマン、ロバート・マン、ヨーゼフ・シゲティ等々。名だたる名伯楽の元で、謙虚な姿勢でそれでいてどこまでも貪欲に学ぼうとする前橋さんの姿には心打たれます。
レニングラード音楽院で教わったという、小指を起点にする左手の指の押え方。この奏法を体得するまでに十年以上を要したものの、それを自分のものにしたことで、余計な力の入らない、身体に負担のない弾き方ができるようになり、長く現役で活動できているという話は印象に残りました。
また、前橋さんが留学した当時のソ連の時代背景、スターリン後の雪解け時代が、その音楽性の醸成に大きな影響があったこと、社会主義下のソ連では一切差別も偏見も受けなかったこと、様々なめぐり合わせが前橋さんの音色を形成していることがわかります。
「ヴァイオリン名曲選」では、毎年珠玉の小品がプログラムに組み込まれますが、前橋さんの小品への思いが本書で述べられています。「小品とは余計なものをそぎ落としていった後に残る本質であり、そこに作曲家の人間性が反映されている。だから人の心を動かすのだ。」(p.111)
引用元:前橋汀子『ヴァイオリニストの第五楽章』(日本経済新聞出版、2020年発行)

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