スタッフブログ
美術館・博物館
2025.02.28
中之島香雪美術館「20世紀美術の巨匠たち♡」

中之島香雪美術館で開催されている「大原美術館所蔵 20世紀美術の巨匠たち♡」に行ってきました。
なにより嬉しかったのが、マーク・ロスコの作品を見れたことでした。
マーク・ロスコの別の作品が、高村薫さんの小説「太陽を曳く馬」の作中に登場し
本の装丁にも使われています。
高村さんがインタビューで「ロスコの絵の前で立ちすくむような感慨を覚えた」と言われていたので
一度見てみたいと思っていました。
今回の展覧会では「無題(緑の上の緑)」が展示されています。
私は緑というより青に近いと思いましたが、絵に吸い込まれていくような
表現できない迫力を感じながら心は静まっていくような…。
何とも心地よく、2回、3回と作品の前に戻り、堪能しました。
同じ空間には香雪美術館所蔵の「薬師如来立像」も展示されていて
心静まる落ち着いた空間が広がっていました。
入ってすぐのラックに、出品リストと共に「ここに注目」というチラシが置いてあり
館長さんや学芸部長さん、受付スタッフの方の「イチオシ!」の作品を解説してあるので面白くてお勧めです。
展覧会は4月6日(日)まで。朝日友の会会員証提示で一般のみ2人まで団体料金になります。
2025.01.22
兵庫県立美術館「1995-2025 30年目のわたしたち」

年明けから連日のように報道されていた「阪神・淡路大震災」。1995年1月17日、目覚める前の街を襲った悲劇から30年が経ちました。被災した兵庫県立近代美術館を引き継いで誕生した兵庫県立美術館では、この節目に、6組7人のアーティストによる特別展を開催しています。
アニメーションを用いたインスタレーション作品で知られる束芋さんは、当時まだ学生で、神戸市内の実家で震災を体験しました。実家をモデルにした作品「神戸の家」では、スクリーンに赤い屋根の一軒家が描かれ、雲とともに不穏な空気が流れます。画面がグラグラと揺れ、大きな手が屋根を外すと部屋やキッチンなどの空間が現れて、家の中を2本の指が歩き回る…。不気味なシチュエーションに心がざわめき、それでも目を離さずにはいられません。
明石市出身の写真家・米田知子さんは、遠い異国の地で故郷が大地震に見舞われたことを知ります。テレビに映し出される映像にショックを受けながら、3月に一時帰国して被災地を撮影。モノクロの写真には、傾いた市役所や工場跡に散乱した靴底、傷ついたレコード盤などが写し出されています。そして30年の節目を前に、震災の日に生まれた人物を撮影しました。カラー写真で正面を向いた人物からのメッセージはありませんが、表情から意志の強さが伺えます。彼らのまなざしこそが、米田さんが伝えたかった明日への希望であり、いまも混沌としている社会に注ぐ一筋の光なのだと感じました。
展覧会は3月9日(日)まで。朝日友の会会員証提示で2人まで団体料金割引になります。
2024.10.11
大阪中之島美術館「塩田千春 つながる私(アイ)」
ドイツ・ベルリンを拠点に活躍する大阪出身の現代美術家、塩田千春さん。大阪中之島美術館で、大規模な個展が開催されています。私も秋晴れの日に行ってきました。
館内のエスカレーターを上がってすぐ目に飛び込んできたのは、天井から降り注ぐ赤い糸と巨大なドレス。第二次世界大戦時、オーストリアの強制収容所にいた囚人と職員の絆がモチーフになっているそうです。この作品の中を通って展示室へ向かうのですが、ふと見上げると、びっしりと網目模様が広がっていました。作品全体が緻密に計算され、編み込まれていることに驚き、制作過程を知りたくてうずうずしてしまいました。
海外に暮らし、闘病を経験し、作品を通じて「生きることとは」「存在とは」と問い続けている塩田さん。赤い糸が表すのは血管であり、人と人を結びつける見えない糸なのだとか。スライドショーでは、彼女が作品を生み出すまでの心の葛藤や強い想いを伺い知ることができます。
そして会場の中心にあったのは、大作「つながる輪」。今年の夏、「つながり」をテーマに広くエピソードを募集して、集まった1500枚以上の紙が赤い糸で編み込まれ、大きな輪のように宙に浮かんでいます。のぞき込むと、大切な家族や友人へのメッセージが綴られていました。
私たちは社会や家庭の中で、さまざまな人とつながりを持って生きています。コロナ禍での行動制限を経てふたたび時間が動き出したいまだからこそ、塩田さんの作品と対峙することで、心の深淵から込み上げてくるものがありました。展覧会は12月1日(日)まで。朝日友の会会員証提示で一般のみ3人まで団体料金割引になります。

1500以上のメッセージが宙に浮く「つながる輪」
2024.09.20
神戸市立博物館「デ・キリコ 展」

神戸市立博物館で開催中の「デ・キリコ展」。デ・キリコといえば、ダリやマグリット、シュルレアリスムの画家に影響を与えた20世紀美術の巨匠です。ただ、その作品は「不可解」「奇妙」「謎」などの言葉で表され、他の画家と一線を画しています。今回の展覧会はデ・キリコの画家人生をたどるもので、私も謎が解けるのか期待しながら出かけました。
会場に入ってすぐ、デ・キリコの代名詞とも言える「バラ色のイタリア広場」が目に入ります。ある秋の日の昼下がり、イタリア・フィレンツェの広場にいたデ・キリコ は、見慣れたはずの風景が初めて見るような感覚に陥ったそうです。これが「形而上(けいじじょう)絵画」制作のきっかけでした。大胆かつ遠近感のない構図、人影はないけれど何かの視線を感じて心が落ち着かない…。そこには非日常の世界が広がっています。
ニーチェの哲学を愛し、戦争を経験し、何度も住まいを変えたデ・キリコ。「イタリア広場」「マヌカン」シリーズの形而上絵画で世間から高い評価を得ますが、その後、ベラスケスやティツァーノの作品に感銘を受け、古典的な絵画を描くようになります(ダリや画家仲間から批判を受けることに)。晩年にはまた形而上絵画に戻りますが、作風は一変し、太陽や月などをモチーフとした明るいポップ調のものになりました。部屋の中に出現した海でボートを漕ぐギリシャ神話の英雄はデ・キリコ自身? それとも?
悩む私たちを眺めながら、デ・キリコはしてやったりとほくそ笑んでいるのかもしれません。謎を解く鍵を探すよりも、それぞれの解釈でデ・キリコの世界を楽しむのが一番だと感じました。ぜひ、会員の皆さんも足を運んでみてください。
展覧会は12月8日(日)まで。朝日友の会会員証提示で5人まで団体料金割引になります。
2024.08.23
髙島屋大阪店 『発掘 恐竜王国展』
フクイベナートルの生態復元ロボット
フクイベナートル・パラドクサスの骨格
福井県の公式恐竜キャラクター、ラプトとサウタンとティッチーが案内してくれました。恐竜がいた時代は、さんじょうき、じゅらき、はくあき。さんじょうき、じゅらき、はくあき。早口言葉で覚えましょう。まずゾーン1は「世界の恐竜王国」。ティラノサウルス(幼体)の生態復元ロボットが展示されていました。リアルな質感で鳴き声をあげながら動いており迫力満点。見学している子どもたちも大喜びです。動くといっても足は固定されているので、子どもに危害を加えることはもちろんありません。じっと見つめていると見つめ返してくれました。ゾーン2は「日本の恐竜王国FUKUI」。福井県勝山市にある、恐竜の化石が多数発見されている”ボーンベッド”などを紹介。福井県で発掘された「フクイベナートル」のロボット展示も。フクイベナートルは獣脚類に分類され、鋭いカギ爪が特徴です。顔や足以外は体毛に覆われていて前足?腕?の後ろには羽があります。しっぽはシマシマ。このフクイベナートルが今回のお気に入り。華やかでビジュアル系恐竜といった趣です。ゾーン3は「いざ発掘に挑戦!」。発掘作業をバーチャル体験できます。子どもたちが並んでいたので、私は遠慮しました。ゾーン4は「福井の恐竜たち」。福井県で発掘されたフクイラプトルやフクイサウルスの全身骨格が展示されていました。発掘作業について学んだ後なので、あの地道な作業で発掘されたのかと思うと一層感慨深いものがあります。最後はゾーン5、「恐竜博物館出張所」。昨年7月にリニューアルされた勝山市の恐竜博物館のご案内です。まだ行ったことがないので、是非行ってみたい!
『発掘 恐竜王国展』は9/2(月)まで開催。朝日友の会会員証の提示で無料になります(1人)。
2024.08.20
秋の信州旅におすすめ!「諏訪市原田泰治美術館」
残暑厳しい日々ですが、処暑(暑さの終わり)が近づいて、わが家の周りでも秋の虫が鳴きはじめています。季節はゆっくりと進んでいるんですね。
さて、紅葉シーズンに向けて、旅行の計画を立てていらっしゃる方も多いのではないでしょうか?朝日友の会では、長野県にある諏訪市原田泰治美術館と新規提携をしました。日本の原風景と人々を描いた「素朴画」で人気の原田泰治さん。その貴重な原画がテーマに合わせて展示されています。館内はバリアフリー設計で歩きやすく、ティールームからは美しい諏訪湖の景色を一望できます。朝日友の会会員は入館料が5人まで団体料金となり、ポストカードのプレゼントもあります(詳しくはアサヒメイト9月号とホームページをご覧ください)。
関西からの交通アクセスは、JR名古屋駅から特急しなのを利用し、塩尻駅乗り換えで上諏訪駅へ。駅からはバスかタクシーが便利です。塩尻駅からレンタカーもおすすめですよ。ぜひ、秋の信州旅のルートに加えてください。

湖畔にたたずむ諏訪市原田泰治美術館

ティールームからは諏訪湖の絶景を楽しめる
2024.07.23
神戸市立博物館 『テルマエ展 お風呂でつながる古代ローマと日本』
恥じらいのヴィーナス
入浴道具
外科器具入れ
公衆浴場が主体だった古代ローマや昔の日本では、お風呂は庶民の娯楽であり、また社交場でもありました。衣服や装飾品を取って裸になれば、身分や財力に捉われず、生身の人対人になります。浴場で使用された用具類や展示されていた像、復元模型などを見ていると、わいわいがやがやと人々がおしゃべりしたり、リラックスしたり、時には喧嘩したり…そんな様子がありありと浮かんできました。
印象に残ったのは、作品番号47の入浴道具と69の外科器具入れ。二千年の時を経て古代の実用品を間近に見られる有難みを感じます。レントゲンもMRIもない、手元を照らす灯はゆらゆら揺れるオイルランプであった時代に、既に西洋医学の礎が築かれていたんですね。
『テルマエ展 お風呂でつながる古代ローマと日本』は8/25(日)まで開催。朝日友の会会員証の提示で団体料金に割引になります(5人)。
2024.07.18
あべのハルカス美術館「広重 —摺の極—」
あべのハルカス美術館で開催中の「広重」展。アサヒメイト7・8月合併号表紙でご紹介している注目の展覧会です。会員の皆さん、もうご覧になりましたか?
大衆文化が花開いた江戸時代、庶民の娯楽の一つが浮世絵でした。歌舞伎役者や女性を題材にした版画が大量に刷られ、人々はこぞって買い求めました。今回の展覧会では、パリ在住のレスコヴィッチ氏のコレクションを中心に、初摺とそれに近い状態の美品が展示されています。美人画の豊国、風景画の北斎、戯画の国芳ら名手に続いて、広重は旅を題材にした「東海道五拾三次」が大ヒットし、躍進を続けます。各地の風景や人々の様子を描いた「名所絵」のシリーズでは、当時流行したペルシャンブルーと紅の配色にこだわり続けた様子がうかがえます。そして、今回もう一つ見逃せないのが版画の下絵。版画は下絵を版木に写すため通常は残っていません。作品にはならなかったけれど、広重の筆遣いが分かる貴重な一枚になっています。
展覧会は9月1日(日)まで。朝日友の会会員証提示で1人のみ半額割引です。また、レスコヴィッチ氏の摺物コレクションは、奈良・大和文華館でも展示されています。こちらも9月1日(日)まで。朝日友の会会員証提示で1人のみ20%割引です。あわせてお楽しみください。

2024.07.04
中之島香雪美術館 『珠玉の西洋絵画』和泉市久保惣記念美術館所蔵品展
ロダン≪考える人≫×茶室「玄庵」
30点に満たない展示でしたが、1点1点に作者のプロフィールと丁寧な解説が付けられており、見応えがありました。華やかで退廃的なベル・エポックの時代から、ヨーロッパが主戦場となった第一次世界大戦を経て、激しい潮流は否応なくヨーロッパの芸術家たちを巻き込みました。そのような社会情勢に伴い、作品のモチーフが、注文を受けて描いていた宗教画や肖像画から、自身の内面を表出する、より内省的で観念的なものへと変化していくさまが興味深かったです。
個人的に特に印象深かったのは以下の3作品。
作品番号11:ピエール=オーギュスト・ルノワール「カーニュのメゾン・ド・ラ・ポスト」
明るく優しい色彩が南仏の空気を運んできてくれます。
作品番号14、オーギュスト・ロダン「永遠の青春」
硬いブロンズ像のはずなのに、柔らかな肉体の感触が伝わってくるようでした。
作品番号19、ジョルジュ・ルオー「女ピエロ」
目がとても印象的。サーカスやピエロは含蓄ある題材で、想像力を掻き立てられます。
『珠玉の西洋絵画』和泉市久保惣記念美術館所蔵品展は9/8(日)まで開催。朝日友の会会員証の提示で団体料金に割引になります(2人)。
2024.06.12
兵庫県立美術館 『キース・ヘリング展 アートをストリートへ』
ナショナル・カミングアウト・デー クラック・ダウン!
赤と青の物語(一部)
シンプルな線と明るい色彩の作風から、ポップカルチャーの代名詞的な存在感を放つキース・ヘリングですが、その大衆性は、主たる活動の場が人種の坩堝と言われるニューヨークだったからこそ、より大きな意味をもったのではないかと思います。どんなに芸術的で高尚でも伝わらない啓発ポスターに意味はありません。その点、ヘリングのポスターは人種も年齢も性別も生活環境も問わず、誰にでも伝わる強いインパクトがあります。「鑑賞者もまたアーティスト」だとして受け手に解釈を委ねる寛容性。一方で、人類が犯し続ける過ちに警鐘を鳴らす力強くも悲痛なメッセージ性。時代を象徴する時事性と、時代を超えて訴えかける普遍性。ヘリングの作品から受けるイメージは様々で、シンプルな作品とは対照的です。
特に印象に残ったのは5章「アートはみんなのために」で展示されていた『赤と青の物語』。作品を起点に物語を創造することを目的としたもので、実際に物語創作コンテストなどの教育プログラムでも採用されているそうです。「写真で一言」ならぬ「ヘリングで一言」のような使い方をしても発想力の訓練になるのではないかと思いました。
『キース・ヘリング展 アートをストリートへ』は6/23(日)まで開催。朝日友の会会員証の提示で団体料金に割引になります(2人)。
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