スタッフブログ
美術館・博物館
2023.09.20
中之島香雪美術館 『茶の湯の茶碗 -その歴史と魅力-』

解説を読む前に、茶碗各部の名称を予習!
「引き出し黒」も魅力的
時代ごとに章立てされており、千利休~古田織部~小堀遠州というそれぞれの時代を牽引した茶人の好みとそれに影響を受けた流行や展開という大きな流れを追うことができました。また、1点1点に技術や特徴の解説が付けられており、個々にじっくりと色合いや柄、釉薬のつき方、土の違いなども鑑賞できます。マクロな視点とミクロな視点のどちらを意識するかによって、同じものでも見え方が違ってきます。
今回ピックアップしたいのは次の2点。
作品№4「灰被天目(はいかつぎてんもく)」。釉薬の薄い部分が黄褐色になっているのですが、その部分が重厚な華やかさを醸し出しています。
作品№27「銹絵文茶碗(さびえもんぢゃわん)」は、焼成時に窯内で倒れて他の茶碗と融着した跡が残っている茶碗。高額で取引されるエラー硬貨を連想しました。歪みや不完全さの中に見出す味わいは茶碗鑑賞の醍醐味だと思います。
『茶の湯の茶碗 -その歴史と魅力-』は11/26(日)まで開催。朝日友の会会員証の提示で団体料金に割引になります(2人まで)。
2023.09.05
角屋 もてなしの文化美術館
京都市指定名勝「臥龍松の庭」
西郷隆盛が行水に使用したタライ
新撰組初代筆頭局長・芹沢鴨が
酔って大暴れした松の間
新撰組が結成されたのは1863年。この夏、結成160周年を記念して、京都の新撰組関連の施設で特別公開が実施されています。せっかくだからまとめて行ってしまおうと、輪違屋~角屋~旧前川邸~壬生寺~八木家と島原から壬生界隈をうろうろしてきました。中でも貴重な機会だったのが、旧前川邸の東の蔵です。新撰組が古高俊太郎を拷問した現場で、これが池田屋事変の端緒となりました。拷問の現場を見て感激というのも少々憚られますが、歴史上有名なエピソードの舞台ですから、やはり今でもきちんと保存されていることに感慨深いものがあります。
角屋は、今回は1階のみの公開でしたが、江戸時代の文化サロンの様子を垣間見ることができ、見応えがありました。指定文化財以外では、西郷隆盛が行水に使用した盥についてのエピソードが印象的でした。太平洋戦争の最中、角屋も建物疎開の対象になり取り壊される予定だったところ、京都市の担当者にこの盥を見せて、明治の元勲も利用した貴重な遺構であることを説明し、その価値を認識してもらって取り壊しを免れました。角屋を救った盥として、家宝ともいえるくらい大切にされているそうです。
角屋 もてなしの文化美術館は、朝日友の会会員証の提示で100円引きになります。企画展は予約制で人数制限をしているそうなので、ご来場前にご確認をお願いいたします。
2023.08.29
髙島屋大阪店 『柚木沙弥郎と仲間たち』
全3章からなる構成で、第1章「出会いとはじまり」では、柚木の出発点となる芹沢銈介の型染カレンダー、生涯を通じて友情を育んだ武内晴二郎や舩木研兒の作品。第2章「生活を彩る色・かたち・もよう」では、仕立てて実際に着用された洋服など、民藝の本質ともいえる、生活の中に息づく作品。第2章と第3章の間には特集展示「柚木家の食卓」があり、柚木家で今も使用されている食器や椅子などが。最後の第3章では、情熱を注いで取り組んだ萌木会の活動とそこに集った染色家たちの作品が展示されていました。共に認めあい、刺激しあった作家たちの関係性に触れることで、作品に有機的な奥行きが加わり、更に活き活きと見えてきました。
特に印象に残っているのは、第1章作品番号23「注染水玉文布」。青と緑の重なりにガラスのような不思議な透明感があり、惹かれました。第3章作品番号2の芹沢銈介「沖縄笠団扇文着物」は、クチナシ色の着物地と豊かな曲線が、見事な色と形の調和を成しています。また、幾何模様の作品がたくさんあったのですが、遠目には規則的に整然と並んでいる模様ですが、よく見ると歪みや不規則な隙間があり、それが何だか小学校の運動会で披露される組体操のようで、親しみを覚えました。
『柚木沙弥郎と仲間たち』は9/3(日)まで開催。朝日友の会会員証の提示で無料になります(1人)。
2023.08.22
髙島屋大阪店 『北欧デザイン展 ていねいに美しく暮らす』
ポール・ケアホルム
「アカデミーキャビネット」(左)
ハンス・J・ウェグナー
「ピーコックチェア」
北欧のやわらかな夕暮れ時
コロナ禍以降、外出が減って「おうち時間」をいかに快適に過ごすかということを改めて考え直した方も多いのではないでしょうか。「北欧デザイン」には、気に入った物に囲まれて、リラックスして過ごす時間の中に見出す穏やかな幸福へのヒントが散りばめられていました。
シンプルで心落ち着くフォルム、時折ハッとさせられる硬質な差し色。肩肘張らないオシャレは心の余裕を感じます。和室に合うデザインが多いことは意外な発見でした。
お気に入りは、ポール・ケアホルムの「アカデミーキャビネット」です。「Less is more(少ない方が豊かである)」を体現した作品で、緊張感のある直線が研ぎ澄まされた美しさを湛えていました。
最後の方には、北欧の1日を通した採光を再現したコーナーがあり、実際に椅子に座って、柔らかな光を感じながら過ごすゆったりとした時間を体感できました。
『北欧デザイン展 ていねいに美しく暮らす』は8/20(日)までで終了しましたが、8/23(水)からは同じく髙島屋大阪店で『柚木沙弥郎と仲間たち』が開催されます。朝日友の会会員証の提示で無料になります(1人)。
2023.08.09
美術館「えき」KYOTO 『絵本作家谷口智則展~いろがうまれるものがたり~』

入場前にサンタさんたちがお出迎え
大阪府四条畷市に生まれ、日本画を学んでいた学生時代に、絵本作家になりたいと独学で絵本作りをはじめた
谷口智則の展覧会が開催されています。
絵本という言葉からイメージする明るい色とは異なる、色深い独特な世界が魅力的な絵は、黒い紙に6色のアクリル絵具で描かれるそうです。6色を混ぜ合わせてその都度、既成ではない色を表現されるので、それぞれの物語や場面に合った多彩な表現ができるのだと納得しました。
会場では展覧会開幕前日のライブペインティングの映像が流れていて、制作の様子をご覧いただけます。
黒い紙から浮かび上がるように描かれる動物や100人のサンタたちは今にも動き出しそうです。
会場には約20タイトルの絵本の中から絵本原画を中心にサンタの立体作品を含む250点が展示されています。
それぞれが得意とする個性を「いろ」として描かれるメッセージに心が温かくなります。
こどもも大人も楽しめる展覧会、会場にぜひ足をお運びください。
『絵本作家谷口智則展~いろがうまれるものがたり~』は9/3(日)まで開催。
朝日友の会会員証利用で1人無料、同伴4人まで100円引きでご覧いただけます。
2023.07.20
大阪中之島美術館 「民藝 MINGEI」
いまから約100年前、思想家の柳宗悦をリーダーに、濱田庄司や河井寛次郎らが起こした民藝運動。名もない職人が作った日用品にこそ「美」があると唱え、全国の手仕事を広く紹介しました。
今回の「民藝」展では、まず柳が当時提案したライフスタイル(居間)が再現され、続いて衣食住のテーマで着物や器、照明、家具などが展示されていました。
特に興味深かったのが、最後の現代のライフスタイル。国内外から集めた民藝の品々が現代の暮らしの中に溶け込みつつ、存在感を出しています。棚に飾られているのは濱田庄司の大皿。本来使うためのものですが、飾ってもカッコいい!わが家にも陶磁器など手仕事の品があるのですが、お気に入りのものほど棚の奥にしまいがちで…。使ってこその「用の美」だと改めて感じました。
「民藝 MINGEI」は9月18日(月・祝)まで。朝日友の会会員証提示で一般のみ3人まで団体料金に割引です。

1941生活展-柳宗悦によるライフスタイルの提案より

Mixed Mingei Style by MOGI インスタレーション[テリー・エリス/北村恵子(MOGI Folk Art)]より
2023.07.11
大阪市立自然史博物館 『恐竜博2023』
タラルルス
亀っぽくもあり、イグアナっぽくもあり
ティラノサウルス・レックス
色々な角度から見られます
「赤ズール・クルリヴァスタトル、青ズール・クルリヴァスタトル、黄ズール・クルリヴァスタトル…」と心の中で呟きながら、長居公園を歩くこと約10分。形を留めた化石が見事に恐竜たちの姿を再現し、大迫力の出で立ちで迎えてくれました。「攻め」の肉食恐竜と「守り」の植物食恐竜。それぞれの生存をかけて、自らの身体を進化させてきた過程を辿ります。かたや現生人類になって以降、道具を作り、改良し、使うことで、生物としての進化とは異なる方法で種を発展させてきたヒト。もし同じ時代に生きていたら、自らが進化した恐竜と道具の進化により攻めも守りも強化してきたヒトと、どちらの方がより強かったのか、いや生き残りをかけて戦うのではなく上手く共存できただろうか、などと考えながら鑑賞しました。
さて、今回のお気に入り恐竜は、「タラルルス」です。まず名前が可愛い!姿もずんぐりむっくりしていて、愛嬌があります。足が短く四足ともしっかりと地に足が着いており安定感のある佇まい。他の植物食恐竜と比べて、しっぽの棍棒は小さ目です。
最後の物販コーナーも楽しかったです。コラボグッズが豊富で、可愛いもの、精巧なもの、一捻りあるものなど、工夫を凝らした、ここでしか手に入らない展覧会オリジナルグッズがズラリと並んでいて、あっちがいいかな、やっぱりこっちにしようかな、とお財布と相談しながら物色しました。
『恐竜博2023』は9/24(日)まで開催。朝日友の会会員証の提示で1人200円引きになります(同伴3人まで100円引き)。
2023.07.07
「唐ものがたり」に行ってきました

中之島香雪美術館で開催されている「唐ものがたり」に行ってきました。
会場を入ってすぐに展示されている「伝銭舜挙 魚籃観音図」。
アサヒメイト6月号でも紹介したこの作品は、陳列ケースではなく
壁掛けに保護ケースという展示方法で、作品が間近で見れます。
色が美しく、観音さまの着物の襞や柄もはっきり見え、思わずため息が出ました。
作品の間にある解説も、わかりやすく面白いです。
解説文にある、落款・印について「何て読むのよ!!」。
私も本当にそう思いました。
作品と共に展示してある極書(鑑定書)や箱も興味深く見ました。
某テレビ鑑定番組で添付の有無や箱にある文字の話が出ますが
これの事かと納得。
出雲松江藩主・松平不昧の名前も挙がっていて歴史を感じました。
最後に展示されていたのは「四季山水図屏風」。
静かな作品なのですが、圧巻。思わず「うわ~」と呟いてしまいました。
展覧会は7月30日(日)まで。
朝日友の会会員は一般のみ団体料金に割引(2人)です。
2023.04.20
中之島香雪美術館 「修理のあとに エトセトラ」
中之島香雪美術館で開催中の「修理のあとに エトセトラ」。今まで、国内外の美術館で修復された名画や工芸品を目にするたび、それが本来の姿なのか、通常どこまで手を加えるのか気になっていました。今回、その答えが見つかるかも、と期待して行ってきました。
会場入り口で出品目録を手に取ると、修理の手順が書かれた鑑賞ガイド(画像やイラストなど図解あり)がついていました。例えば掛軸の場合、書画がかかれた本紙(絹など)には裏打紙が何層もつけられています。それらをピンセットで丁寧に剥がし、本紙のみの状態にします。そして修理後に新たな裏打紙を重ねていくそうです。作業の様子はビデオでも紹介されていて、その緻密さに気が遠くなりました。
香雪美術館では、色落ちや文字の剥落など失われたものはそのまま、最低限の補修をして、保管時に作品を傷めないよう様々な工夫を凝らされています。すべては、貴重な作品を後世に伝えるため。修復してきた前世の人に敬意を払い、後世の人へとつないでいく。美術館と修理を担う職人の想いが伝わってきて、胸が熱くなりました。皆さんもぜひ足を運んでみてください。
展覧会は5月21日(日)まで。朝日友の会会員証提示で一般が2人まで団体料金に割引です。

修理の終わった「聖徳太子絵伝」(第9幅)

「聖徳太子絵伝」の旧表具には火災に遭ったような痕が・・

「愛染明王像」の軸を優しく保存するための太巻き
2023.04.18
京都市京セラ美術館 『生誕100年 回顧展 石本 正』
チラシとクリアファイルと作品リスト
学生の頃、授業の課題として描いた作品から、未完となった最期の作品まで、生涯を通した画業の全貌を通覧できる展覧会でした。作品解説の中で時おり触れられるご本人の言葉、1971年の日本芸術大賞と芸術選奨文部大臣賞の受賞以降、すべての賞を辞退し地位や名声を求めなかったこと、川端康成との交流エピソード、故郷の人たちと触れ合う絵画教室の開催など、作品の奥や周辺に垣間見える作家自身の人となりもとても魅力的な方です。
本展でピックアップしたいのは、作品番号46の『五条坂風景(五条坂)』と99の『ポンテ・ベッキョ』です。線と面だけで構成されており、人も動物も植物も登場しない硬質な風景画。色合いも青やグレーを基調としており、こうして文字だけで表現すると、とても冷たい無機質な作品のようですが、そんな単純な捉え方では収まらない存在感を放っていました。ただそこにあるものを感じなさいと促してくれているようで、対象を視覚だけでなく五感の全てで感じることの大切さを思い出させてくれました。
『生誕100年 回顧展 石本 正』は5/28(日)まで開催。朝日友の会会員証の提示で団体料金に割引になります(5人まで)。
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