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2025.01.22
兵庫県立美術館「1995-2025 30年目のわたしたち」

年明けから連日のように報道されていた「阪神・淡路大震災」。1995年1月17日、目覚める前の街を襲った悲劇から30年が経ちました。被災した兵庫県立近代美術館を引き継いで誕生した兵庫県立美術館では、この節目に、6組7人のアーティストによる特別展を開催しています。
アニメーションを用いたインスタレーション作品で知られる束芋さんは、当時まだ学生で、神戸市内の実家で震災を体験しました。実家をモデルにした作品「神戸の家」では、スクリーンに赤い屋根の一軒家が描かれ、雲とともに不穏な空気が流れます。画面がグラグラと揺れ、大きな手が屋根を外すと部屋やキッチンなどの空間が現れて、家の中を2本の指が歩き回る…。不気味なシチュエーションに心がざわめき、それでも目を離さずにはいられません。
明石市出身の写真家・米田知子さんは、遠い異国の地で故郷が大地震に見舞われたことを知ります。テレビに映し出される映像にショックを受けながら、3月に一時帰国して被災地を撮影。モノクロの写真には、傾いた市役所や工場跡に散乱した靴底、傷ついたレコード盤などが写し出されています。そして30年の節目を前に、震災の日に生まれた人物を撮影しました。カラー写真で正面を向いた人物からのメッセージはありませんが、表情から意志の強さが伺えます。彼らのまなざしこそが、米田さんが伝えたかった明日への希望であり、いまも混沌としている社会に注ぐ一筋の光なのだと感じました。
展覧会は3月9日(日)まで。朝日友の会会員証提示で2人まで団体料金割引になります。