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スタッフブログ

美術館・博物館

2023.03.08

上方浮世絵館 『大阪の役者絵 中判へのいざない』

一養亭芳瀧『今様源氏五十四帖之内』

一養亭芳瀧『契情玉手箱』

水野忠邦の天保の改革によって、春画や役者絵などの出版が禁止され浮世絵は大きな制限を受けました。その後、弘化期に復活した際には、天保以前の大判から中判に判型を変えて、大阪の役者絵は再び隆盛します。本展は、この中判の役者絵にスポットを当て、同じ題材の作品の大判と中判を並べて展示するなど、比較しながら楽しめる構成になっていました。
今回のお気に入りは、一養亭芳瀧『今様源氏五十四帖之内』と、同じく芳瀧の『契情玉手箱』。前者は、背景を排して大胆に源氏香の文様を施した作品。デザイン性が高くとてもファッショナブルで、芳瀧のセンスに感心しました。後者は北の篁が手に持っている灯が放つ光線内外のくっきりとした描き分けが特徴的で印象に残りました。
上方浮世絵館は法善寺向かいの賑やかなところにありますが、館内は静かでゆったりじっくりと鑑賞できました。帰りに久しぶりにアルションでクレープを!と思いましたが、行列になっていたので諦めました。残念!😢
『大阪の役者絵 中判へのいざない』は5/28(日)まで開催。朝日友の会会員証の提示で50円割引とポストカード1枚プレゼント(5人)。

2023.03.02

美術館「えき」KYOTO 『ミュシャ展~マルチ・アーティストの先駆者』

NO.71 コルナ紙幣、郵便切手など

NO.101 学生時代のノートと複製

NO.125 挿絵原画

ミュシャの生家近くに在住し親子三代に渡って収集された膨大なチマル・コレクションからの出展です。代表的なポスターだけでなく、書籍の挿絵、商品のパッケージ・デザイン、直筆の素描や水彩画など、ミュシャの多彩な多才ぶりを存分に堪能できました。それまで王侯貴族の庇護下で発展してきた芸術が、広く庶民にも共有されるようになる過程で、ミュシャの放った存在感は格別のものがあります。工業技術の向上による再現性の進化とミュシャの繊細な表現が見事にマッチしており、美麗な実用品を手にする喜びを、当時の人々と共有しているような気持ちになれました。
特に心に残っているのは、作品番号71「チェコスロヴァキアのコルナ紙幣、郵便切手とデザイン画」、同101「素描集『学生時代のノート』と内部の複製」、同123~128「クサヴィエ・マルミエ著『おばあさんのお話』の挿絵原画」です。ミュシャの多彩な多才ぶり(しつこいって?…スミマセン)を象徴しているように感じられました。
『ミュシャ展~マルチ・アーティストの先駆者』は3/26(日)まで開催。朝日友の会会員証の提示で優待料金に割引になります(4人)。

2023.02.20

中之島香雪美術館 「館蔵 刀装具コレクション」

暖かくなったと思ったら寒の戻り…。なかなか一気に春へと向かってくれませんね。季節の変わり目です。会員の皆さんもどうぞご自愛ください。
先日、中之島香雪美術館で開催中の「館蔵 刀装具コレクション」へ行ってきました。刀剣の知識がまったくない私、「刀装具って?刀剣を飾る道具?」と考えてみてもよく分からず会場へ。まずは、パネルで「刀装具」の部位や名称、役割について学びました。
刀装具とは、戦いなどで刀剣が損傷しないように守るための道具で、江戸時代には武士の地位や権力を示すものとなり、次第に芸術性が高まっていったそうです。手に握る長い柄(つか)の中央にあるのは、滑り止めにもなる「目貫(めぬき)」。展示品を見ると、2、3センチほどでの小さなもので、家紋や縁起物、動植物など様々な形をしています。目を凝らすと細部まで美しく、動物のしぐさや表情も愛らしい。他にもペーパーナイフの役割を持つ「小柄(こづか)」や髪を整える「笄(こうがい)」などが刀の鞘(さや)に取り付けられ、現代のイケオジに通じる武士の美意識を感じました。そして、時代の変遷とともにデザインが多彩になり、持ち主のこだわりも強く反映されるのがおもしろかったです。皆さんもぜひ、小宇宙の芸術を体験してみてください。できれば双眼鏡持参がおすすめです。

2023.02.02

あべのハルカス美術館 『アリス-へんてこりん、へんてこりんな世界』

19世紀後半、ヴィクトリア朝時代の興味深い展示物がたくさん

狂ったお茶会のインスタレーション

アニー・リーボヴィッツが撮ったアリスの世界観も好きです

原作の誕生から、映画、舞台、広告素材や表現行為のモチーフとしてのアリスなど、アリスにまつわる様々な創作物を総覧した展覧会でした。数学者であり論理学にも長けたチャールズ・ラトウィッジ・ドジソン(ルイス・キャロル)から創造された物語が、既存の秩序の中で息苦しさを覚えるクリエイターたちのインスピレーションを今なお刺激し続けています。そのこと自体が、アリスの物語の中で展開されている事象であるかのように、現実感を失う感覚を覚えました。ジェットコースターに乗った後、地に足をつけているのに、上下左右のわからない浮遊感が残るような…
さて、本展で特に好きだったのは、作品番号145~163のティム・バートンのキャラクターデザインと、作品番号198~201のラルフ・ステッドマンの挿絵です。音もCGもなく、紙とインクだけで表現される二次元空間に、愛嬌のあるキャラクターが活き活きと描かれています。
『アリス-へんてこりん、へんてこりんな世界』は3/5(日)まで開催。朝日友の会会員証の提示で半額になります(1人、同伴1人を団体料金に割引)。

2022.11.17

中之島香雪美術館 『伊勢物語 絵になる男の一代記』

「伊勢物語図色紙」香雪美術館蔵のA5クリアファイル

華やかな平安絵巻を期待して行ったところ…いや、もちろん期待通りではあったのですが、煌びやかな絵巻物の印象よりも、学術的な考察が大変興味深く、勉強になる展覧会でした。
第四十九段の「琴」の有無とその場に描かれている兄と妹の佇まいから伝わる雰囲気。よそよそしいのか、仲睦まじいのか。物語絵の共通点から導き出される、基本となる型の絵があったのではないかという考察。並べ、比較し、考え、読み解く面白さが伝わってきました。
さて、学術的とはいっても、毎度挙げているように、今回もお気に入りはピックアップしておきます。作品番号20の『伊勢物語絵巻』です。緻密な部分と、大雑把に省略されている部分があったり、周囲との対比で明らかに大きく描かれている草花があったり、独特の表現で印象に残りました。もちろん香雪本の『伊勢物語図色紙』も微細なところまで描き込まれた良作で必見です!
『伊勢物語 絵になる男の一代記』は11/27(日)まで開催。朝日友の会会員証の提示で団体料金に割引になります(2人まで)。

2022.10.21

大阪中之島美術館「ロートレックとミュシャ」展

10月14日、大阪中之島美術館で開催される「ロートレックとミュシャ」展の内覧会へ行ってきました。「ベル・エポック(美しき時代)」と呼ばれる19世紀末のパリで活躍し、ポスターを芸術の域に高めた2人、ロートレックとミュシャの代表作が展示されています。実はこれらのほとんどが、大阪市・天保山にあった旧サントリーミュージアムのコレクション。2010年に休館になり大阪市に寄託され、久しぶりに公開されました。
興味深いのは、同じ作品のステート(刷りの段階)違いを見られること。たとえばミュシャが手がけた舞台女優サラ・ベルナールのポスターなら、背景のデザインが変更されたり、会場の名前が追加されたりしています。そして個人的には、ポスターのタイトル文字に目が止まりました。すべて画家の手描きで、細部にまでこだわっています。デジタルが主流の現代では、パソコンの文字はきれいに整っていますが、なんだか物足りない。画家の情熱がストレートに伝わってきて、とても新鮮でした(30年ほど前は日本の広告もそうだったよなぁ・・とつい感傷的に)。
ショップでは、額装されたミュシャのリトグラフ(小判サイズ)が売られています。すべて本物で、早い者勝ちなのだとか。ミュシャ好きな方はこちらも必見です!
「ロートレックとミュシャ」展は2023年1月9日(月・祝)まで。朝日友の会会員証提示で3人まで団体料金に割引です。

Hミュシャ

ダイビルの2F通路から眺める大阪中之島美術館。後ろに国立国際美術館が見える

Hミュシャ2

アルフォンス・ミュシャ「ジスモンダ」(左)「ジスモンダ(文字のないステート)」(右)1894年 ともにサントリーポスターコレクション、大阪中之島美術館寄託

2022.09.22

髙島屋大阪店 『追悼 瀬戸内寂聴展』

寂聴さんの書斎再現

酒と肉が大好きで愛に生きた僧侶、寂聴さんを想うと、歴史の授業で習った「白河の清き魚も棲みかねて もとの濁りの田沼恋しき」という狂歌が頭に浮かびます。これは寛政の改革を風刺した歌ですが、寂聴さんの言葉に励まされ癒される人々もまた、濁りなき聖を息苦しく感じ生々しい俗にどこか安らぎを覚えていたのではないでしょうか。
展覧会は全6章で構成されており、第5章「源氏物語の世界」に展示されていた「現代語訳のための決意メモ」と「あの訓戒、全然守れなかった」は、是非はご覧いただきたいです。長い年月をかけた源氏物語の現代語訳に取り組むにあたっての固い決意!かと思いきや…何とも寂聴さんらしく、人間的魅力に溢れています。また、出家得度前にカトリックの洗礼を受けることについて相談したという遠藤周作さんからの手紙はとても心がこもっていて、その交流に温かい気持ちになりました。
『追悼 瀬戸内寂聴展』は大阪店では9/26(月)まで、その後、髙島屋京都店で10/12(水)から10/31(月)まで開催。朝日友の会会員証の提示で無料なります(1人)。

2022.09.09

阪急うめだ本店 『小松美羽展』

自己と外界に向き合い深く深く探究していくと、このようなエネルギーに溢れた、魂の躍動する世界が見られるのでしょうか。荒々しく、それでいて繊細。描かれた神獣たちは、近寄りがたい「霊性」ではなく、親しみやすく愛らしい「霊性」を湛えていました。
個人的なイチオシ作品は、『宇宙吠え獅子』と「見ざる聞かざる言わざる」ならぬ『悪を見るな-山犬-』『悪を聞くな-山犬-』『悪を言うな-山犬-』の三連作です。『宇宙吠え獅子』は、有田焼の美しい白磁にフワッとした模様と丸いフォルムがたまらない。宇宙に向かって吠えているはずなのですが、玄関に鎮座されていると「おかえり!」と今にも言ってくれそうです。『悪を~』は、清らかな善なる精神の衒いのない表現を広く共有したいと思いました。
作品だけではなく、会場内に展示されている小松美羽さんの言葉も、是非じっくりと読んでいただきたいです。純度の高い魂から紡がれる言葉には、素直に心を打たれます。
『小松美羽展』は9/19(月・祝)まで開催。朝日友の会会員証の提示で100円割引になります(1人)。

『宇宙吠え獅子』

静かな空間で小松ワールドに浸れます

円を描くしっぽの軌道が
「大調和」をイメージしているような??

2022.08.30

神戸市立小磯記念美術館 『秘蔵の小磯良平-武田薬品コレクションから』

緑豊かな六甲アイランド公園内にあります

美術館の中庭に移築された自宅兼アトリエ

年も近く、父の代から縁のあった小磯良平と六代目武田長兵衛。戦争で自宅兼アトリエを焼失した小磯に、武田が住吉山手の自宅近くの土地を紹介したことでご近所さんとなり、その後、生涯にわたって親しい交流が続いたそうです。食事や旅行をともにしたり、小磯作品の題材となる舞妓の髪型を様々な角度から写真に収めて制作に協力したり。それほどに深い理解者であった武田長兵衛の、まさに「秘蔵」といえるコレクションでした。
1~3部に分かれており、第1部は油彩の肖像画を中心とした展示です。ここでは作品番号42「婦人像」が印象に残りました。緑色のドレスを着たご婦人なのですが、そのドレスの布地、サテンの質感がありありと伝わってきます。
2部以降では、数々の薬用植物画が展示されています。中でも今回のお気に入りは、作品番号128「ワタ」です。ほとんどの作品が繊細な線描で表現される中、真っ白な綿の果実がフワフワと可愛らしく、42「婦人像」同様にその手触りを視覚から感じ取ることができます。もう1点は作品番号160「シャクヤク」。ここで展示されている植物画は『武田薬報』の表紙画として描かれたものですから、花、実、葉、茎だけでなく、地中に埋まっている「根」を強調して描かれているものが多くありました。特にそれが印象に残ったのが「シャクヤク」です。芍薬というと艶やかで優美な花の代表格ですが、薬用植物として描かれる芍薬は、ただ美しいだけではありません!と主張しているようでした。
『秘蔵の小磯良平-武田薬品コレクションから』は9/25(日)まで開催。朝日友の会会員証の提示で200円引きになります(5人まで)。

2022.08.26

神戸ゆかりの美術館「白洲次郎・白洲正子」

昭和の激動の時代を生きた白洲次郎と正子。今も多くのファンを持つ2人の展覧会が、神戸ゆかりの美術館で開催されています。会場はそれぞれの生い立ちに始まり、結婚前に交わした書簡、趣味や仕事、そして武相荘(自宅)での暮らしぶりまで、いくつかの章に分けて紹介されています。
私が興味をひかれたのは、正子と装丁家・青山二郎との手紙のやり取り。骨董好きの正子が師と仰いだ青山は辛口な評論で知られ、正子からの手紙にも「面白くない、簡潔に上手に書くように」と返事をしています。当時、青山や小林秀雄、大岡昇平らは夜な夜な集まって、骨董や美の本質について論じていました。銀座で工芸の店を開いていた正子も割り込んで参加するのですが、お酒と不規則な生活に何度も胃潰瘍になり、入院することもあったとか。夫の次郎は反対しなかったのか?と思いますが、互いを尊重し、領域には踏み込まなかったようです。好きなことには真っ直ぐな、似た者同士だからでしょうか。そういうわけで、会場には正子が集めた古伊万里の器をはじめ、高名な作家たちの作品がずらりと並んでいます。
ほかにも正子愛用の着物や西国巡礼の取材メモ、次郎の愛用品や戦後日本政府の代表としてGHQと交渉した際の書類など、貴重な品々が展示されています。2人が何に情熱を注ぎ、どう生きたのかをぜひ会場で体感してください。
「白洲次郎・白洲正子」展は9月25日(日)まで。朝日友の会会員証提示で4人まで団体料金に割引です。

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