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スタッフブログ

2024年02月

2024.02.29

2/16 オルガン名曲決定版2024

残響2秒というクラシック音楽に最適なザ・シンフォニーホール。ホール設置のスイス・クーン社製のオルガンもまさにホールの歴史とともに歩んできた名器。今回そのオルガンを弾きこなすのは、関西から世界に羽ばたいている冨田一樹。
「名曲決定版」というタイトルにふさわしくバッハ以前から近代まで幅広いレパートリーを展開されました。
パイプオルガンはなんと3000以上ものパイプと50にもおよぶストップを駆使して、一変幻自在な響きを実現されます。足鍵盤も駆使する演奏者にとってはなんとも目まぐるしいですが、観客にとっては響きに酔いしれる1時間でした。
個人的にはオルガンといえばという著名なバッハの重厚な曲というイメージを持っていたのですが、「ケルナー」「シャイデマン」などの作曲家を新たに知ることができ、それぞれのコミカルであったり、明るく朗らかな響きの曲を聴くことができたのは、新しい発見でした。
 

チケット・パンフレット

2024.02.16

2/11(土)イム・ユンチャン ピアノ・リサイタル

チラシとプログラム

ショパンのエチュード全曲演奏というプログラム。エチュードというと練習曲ですが、軽々と弾きこなす姿に、本当に練習しているところを見ているかのように錯覚しました。大国の思惑に翻弄されたポーランドという悲しい歴史を背負った国に生を受けたショパンの曲は、激しく繊細で深い想いに彩られています。まだ弱冠19歳のイム・ユンチャンが、そんな背景を持つ作品をなぜこんなにも自在に表現できるのかと不思議ですが、圧倒的な才能の前には、そんな先入観がそもそも無粋なのでしょう。鳴りやまぬスタンディング・オベーションにも、全く表情が変わらず、ややぎこちなささえ感じるような佇まいのイムさん。まだ世慣れない様子は、センセーショナルなデビューを果たしたときの藤井聡太さんを思い出し、一流の演奏とのギャップが微笑ましく感じられました。
アンコールはショパンのノクターン第20番『遺作』とベッリーニ(ショパン編曲)歌劇「ノルマ」より『清らかな女神よ』。『清らかな女神よ』は歌の方で耳慣れていたので、ピアノソロのバージョンが新鮮でした。

2024.02.14

京都市京セラ美術館「村上隆 もののけ 京都」

現代アートの世界で国際的に高い評価を受ける村上隆。京都市京セラ美術館で、関西初の大規模な個展が開幕しました。初日はトレーディングカード目当ての人々で大混雑しましたが、ようやく落ち着いて鑑賞できます。
かねてから、江戸時代の京都で活躍した絵師たちに深い関心を寄せていた村上隆。自身も京都に移り住み、伝統や文化芸能に親しんでいます。今回は「京都」に正面から向き合い制作したとのこと。展示会場へ向かう中央ホールでは、赤鬼と青鬼の迫力ある「阿吽像」が来場者を出迎えています。会場に入ってすぐ、目に飛び込んでくるのは全長13mの「洛中洛外図 岩佐又兵衛 rip」。17世紀初めの傑作「洛中洛外図屏風」(舟木本・国宝)を手本にしたとか。描かれているのは町に暮らす人々の日常で、村上のトレードマーク「お花」がダイダラボッチのように徘徊しています。金色の雲にはドクロ模様が浮かび、空にはゆるキャラの「風神」の姿も…。続いての作品「尾形光琳の花」「京都光琳 もののけフラワー」は、金箔に波模様の琳派風ですが、よく見ると「お花」がにっこりと笑顔を向けています。
作品近くには、村上隆手描きのメッセージボードがあり、来場者に楽しんでほしいという思いが伝わってきます。本人曰く、国内ではこれが最後の展覧会とか。もののけたちがうごめく世界を、皆さんもぜひ体験してみてください。
展覧会は9月1日(日)まで。朝日友の会会員証提示で5人まで団体料金に割引となります。

「洛中洛外図 岩佐又兵衛 rip」(部分)は細部に注目

「風神図」「雷神図」も村上ワールド全開

2024.02.09

国立国際美術館 特別展『古代メキシコ』

球技をする人の土偶

トゥーラのアトランティス像

古代メキシコ展もエジプト展と同じく、「テオティワカン」、「テノチティトラン」、「テスカトリポカ神」など、覚えにくい名称のオンパレード。会期は5月まであるので、その間「赤テノチティトラン青テノチティトラン黄テノチティトラン」と練習しようと思います!
何の益もない話はさておき、厳しい環境の中で育まれた文明は、超自然の存在への畏怖が強く伝わる神秘的な世界観を湛えていました。中でも興味深かったのは、球技に関する展示です。球技をする人の土偶(№10)や「ユーゴ」という球技用防具(№11)、ゴムのボール(№12)、王が球技をする様子が描かれた外交関係を象徴する石彫(№87)など。ピラミッドや神殿と同様に都市の中心部に球技場が建設されていたことからも、その重要性が伺えます。メソアメリカ世界の球技について、どこかで読んだことがあったなと思い、帰宅して埃をかぶっていた本を探し出しました。公開講座の書籍化で平易で読みやすいので、長くなりますがそのままここに引用させていただきます。
「ボールを手で投げるのではなくて、お尻とか肩でボールを飛ばす。中米は天然ゴムの産地なので、ボールは天然ゴムでつくられている。それを後ろを向いてお尻で飛ばす。しかし、それはかなり痛いらしくて、鹿の皮でつくった褌状のものをはいて、ボールがぶつかっても痛くないようにしている。」~中略~「このように尻でボールをあてて飛ばして、あの環を通すのであるから、われわれにはちょっと想像もつかないような大変な技術である。つまり後ろを向いて尻でボールを飛ばして、しかも高いところにある小さな環の間を通すのである。一体どれくらい練習すればできるようになるのか不思議だが、いずれにしてもそういうことが行われていた。」手ではなく腰を使うバスケットボールのようなイメージでしょうか。また、球技の持つ意味については、「球戯はマヤにおいては、神話的な背景をもっていたのではないかといわれている。というのはマヤの一派であるキチェ族というインディオに伝えられていた『ポポル・ヴフ』という叙事詩に書かれた神話によると、この世の初めにおいて二人の男の兄弟がいた。これはおそらく太陽と月をあらわしていると思われるが、これが暗黒をあらわすいろいろな神々とボールを使って競技を行い、それを負かしたという。マヤにおいて行われた球技は、いわば神話に語られたこの世の初めの、最初のボールの競技を儀礼として繰り返して行っているのではないか、神話で語られているこの世の初めにおけるボールを使っての競技を手本として繰り返し行っているのではないか、と解釈されている。」単なる娯楽ではなく儀礼的な意味をもっていたということですね。
特別展『古代メキシコ マヤ、アステカ、テオティワカン』は5/6(月・振休)まで開催。朝日友の会会員証の提示で団体料金に割引になります(3人まで)。
引用元:「東京大学公開講座44 スポーツ」(東京大学出版会、1986年発行)より、大林太良『スポーツと儀礼』

2024.02.07

2/3(土)千住真理子 バレンタイン トーク&リサイタル

アンコールの選曲にも大満足です!

今年のサブタイトルは≪アヴェ・マリア≫。千住さんがトークで「とても広い意味で愛の音楽」と言われていましたが、宗教的な崇高さよりも温かく親しみのある愛に満ちたリサイタルでした。千住さんが紡ぐ「デュランティ」の豊かな響きが、山洞さんが紡ぐチェンバロの素朴で優しい音色に共鳴して、音の中をゆらゆらとたゆたうような心地よさを味わえました。楽器の特性としてほとんど音の強弱がないチェンバロですが、ヴァイオリンの音と絡み合うことで、決して単調ではなく多彩な表情を見せてくれます。今回使用されたザ・シンフォニーホールのチェンバロは、神社の鳥居のような朱色が施されており、鍵盤側から見るととても小さくて驚きました。ピアノとは似て非なる弦楽器。ピアニストが本職の山洞さんですが、是非山洞さんの演奏で!というお客様や千住さんのリクエストに応えて、工夫を凝らして演奏してくださいました。
アンコールは、ヴィヴァルディの合奏協奏曲「四季」より”冬”第2楽章とカッチーニの「アヴェ・マリア」。
来年は演奏活動50周年を迎える千住さん。一体どのような円熟の演奏を聴かせていただけるのか、今から楽しみです。

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